厚生労働省が発表している「人口動態調査」によると、2020年(令和2年)における65歳以上の高齢者の「家および居住施設の浴槽における死亡者数」は4,900人に達しています。これは交通事故による死者数2,508人の約2倍にも及ぶ高い数値です
高齢者の入浴中の事故の発生状況参考資料

なお、入浴中にはほかにもヒートショックなどが原因で死亡するケースもあることを考えると、実際に浴室で亡くなる高齢者はもっと多数に及ぶと考えられます。高齢者の浴室内での死亡事故を防ぐには、バリアフリーリフォームが欠かせません。

今回は、浴室をバリアフリーリフォームするときに押さえておくべき6つのポイントと、知っておきたい2つの注意点を紹介します。

浴室をバリアフリーにリフォームするときの6つのポイント

浴室をバリアフリーにリフォームするときのポイントは以下の6つです。

ポイント①入口の段差をなくす

高齢になるとわずか数センチの高低差でも、つまずいて転倒しやすくなります。そのためバリアフリーリフォームの基本は段差をなくすことであり、それは浴室でも同じです。

壁にタイルが張られた昔ながらの在来浴室の場合、脱衣所から浴室には7〜10cm程度の段差が設けられているのが一般的です。浴室への段差は完全になくすか、2cm以下になるようリフォームしましょう。洗面所とひと続きになっている場合には、廊下から洗面所への段差も含めたリフォーム計画を立てることが大切です。

ポイント②扉は引き戸か折り戸にする

浴室の扉は、可能な限り引き戸にし、難しい場合は折り戸にします。扉が開き戸で、しかも内開きになっている場合、万一浴室内で事故があったときに外からの開閉が困難で、救出が遅れる可能性があり危険です。

また引き戸にすれば、開口部を広く取れることから、車イスでの補助が必要となったときに便利です。さらに安全を考えるなら、扉に使用されるガラスは割れにくいものを選んでおくと安心です。

ポイント③滑りにくい床材を選ぶ

浴室に使用する床材は、とにかく滑りにくいものを選ぶことが重要です。従来の在来浴室では、床にタイルを使用するケースが多くありました。しかし、

・濡れたときに滑りやすくなる

・クッション性がないため転倒した際に危険

・表面が冷たくヒートショックのリスクを高める

などの理由から、近年は使用を避けることがほとんどです。

浴室の床材には滑り止め加工がされているものを選ぶのはもちろん、水はけや断熱性、クッション性があるかなどもあわせてチェックしましょう。

ポイント④手すりを設置する

浴室内では、浴槽をまたいで出入りする際に、転倒する危険性が高いとされています。そのため浴槽へ移動するときに、つかみやすい位置に手すりを設置します。

またイスに座ってシャワーを浴びる場合も、立ち上がったり座ったりする際に、バランスを崩して転倒する恐れがあります。イスを置く近くにも、手すりを取りつけておくと安心です。

ポイント⑤浴槽は浅いものを選ぶ

浴室のリフォームで浴槽を入れ替えるときには、深さにも注意が必要です。

ユニットバスの浴槽は60cmのものが一般的ですが、高齢者にはまたぐのが厳しくなります。浴槽は、40cm程度の浅いタイプを選びましょう。

ポイント⑥ヒートショック対策をおこなう

気温差がある場所に移動することで起こるヒートショックを防ぐために、浴室はもちろん脱衣所を暖められるようにしておくのも重要です。

脱衣所に床暖房やエアコンを設置し、浴室には暖房機能付きの浴室乾燥機を入れ、入浴前に暖めておくと安心です。浴室を使ったあとに乾燥させるようにしておけば、カビの発生や床のぬめりを防ぐのにも役立ちます。

浴室をバリアフリーにリフォームするときの2つの注意点

浴室をバリアフリーにリフォームするときには、以下の2点に注意しましょう。

注意点①実際の動作をシミュレーションする

浴室をバリアフリーにリフォームするときには、対象となる高齢者が実際に浴室を利用する際の動きをシミュレーションすることが大切です。浴室内での動きは人によって異なることから、想像だけで手すりを設置しても、使いづらくて役に立たない可能性があるためです。

脱衣所で衣服を脱ぎ、浴室のドアを開け、浴槽に入るまでどのような動きをするのかを細かに確認しておけば、適切な場所に手すりを設置できるので、より安全性を高められます。

注意点②バリアフリーリフォームの経験豊富な業者を選ぶ

リフォームを依頼するときには、バリアフリーについて詳しく、工事経験が豊富な業者を選ぶことも重要です。

手すりはただ取りつければいいわけではなく、握りやすい太さや設置位置などを対象者に合わせて細かに設計する必要があります。知識と経験のある業者に依頼すれば、適切なアドバイスをもらったうえで効果的なバリアフリーリフォームを実現できます。

まとめ

浴室は水を使用するため滑りやすく、転倒の危険性が高い場所です。床がタイルなど硬い素材であれば骨折する危険性や、頭を強打すれば命に関わる可能性もあります。そのため浴室は、家のなかでも最優先でバリアフリーリフォームを検討するべき場所です。

祢冝田建設では、浴室のバリアフリーリフォームの経験も豊富です。ご家庭の事情を詳しくお聞きし、対象の方にあわせた適切なリフォームをご提案しますので、お気軽にお問い合わせください。