ときどき、ネットで「屋上テラスのある家を建てて後悔した」という口コミを見かけます。屋上テラスにはリスクがあり、多くのハウスメーカーもつくることに消極的です。

しかし、屋上テラスにはベランダやバルコニーにはない長所があり、新築のプランに取り入れたい方が少なくありません。どんなところに注意すれば、後悔せずに済むのでしょうか。

本稿では、屋上のある家にありがちな後悔事例や、屋上テラスのメリット・デメリットをご紹介します。新築で屋上をつくりたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

屋上のある家を建てた人は、何に後悔しているのか

さっそく、屋上のある家にありがちな後悔事例からご紹介しましょう。

雨漏りしてしまい後悔

屋上のある家は、勾配(傾斜)のある屋根の家に比べて雨漏りするリスクが上がります。ですから、雨漏りで後悔される方や、屋上のある家を建てることに消極的なハウスメーカーが少なくありません。

雨漏りを防ぐには、施工精度が高いハウスメーカーを選ぶことと、定期的なメンテナンスが欠かせません。これを怠たると、雨漏りのリスクがグンと上がります。

昨今、台風や豪雨が激甚化していて、集中豪雨で屋上の排水能力を超えてしまう恐れも出てきました。排水能力を低下させないために、こまめな排水溝の掃除も欠かせないでしょう。

鳥のフン掃除が大変で後悔

屋上のある家は、鳥のフン被害にも悩まされます。

一般的な勾配屋根でも鳥のフン被害はありますが、屋上ほど目立たないし、気になりません。一方、屋上は見た目や臭い、衛生面で鳥のフンが気になりやすく、きれい好きな方ならすぐ掃除したくなるでしょう。

屋上は鳥の侵入を防ぎにくく、ハトなどにとっては休憩にもってこいの場所です。だんだんハトの滞在時間が長くなり、ねぐらにされ始め、ある日気づいたらフンだらけ。しかも、卵が……となりかねません。

ハトは帰巣本能が強く、自分のフンに執着して戻ってきますので、フン掃除はハトよけの基本です。また、ハトのフンには病原菌が含まれていて危険ですので、面倒ですができるだけ早めに掃除しましょう。餌やりは厳禁です。

参考:横浜市「クリプトコッカス症について」

近くのマンションから丸見えになり後悔

屋上は近隣住宅より高い場所にあるので油断しがちですが、背の高いマンション等から丸見えになるケースがあります。眺望を重視して視界を遮らない手すりにすると、さらにプライバシーの確保が難しくなるでしょう。

屋上をつくるなら、向こう三軒両隣だけでなく、周囲のマンションからの視線も考慮して設計しましょう。オーニングテント等を設置するための金具を取り付けておくのもよいでしょう。

屋上で歓談や食事をするときは、煙や臭い、話し声にご注意ください。回りに迷惑をかけると、クレームが入ったり、通報されたりすることも考えられます。

屋上テラス(ルーフバルコニー)とは

ところで、屋上テラスとはどういうスペースなのでしょうか。つづいて、屋上テラスについて簡単に説明したいと思います。

屋上テラスの特徴

屋上は「屋根にあたるところにつくられた、人の出られる平らなところ」を指し、陸屋根(ろくやね)とも呼ばれます。陸(ろく)は「水平」を意味する言葉です。

以下のケースでは、屋根を一部残し、残りの部分を屋上にする場合もあります。

  • 屋根に太陽光パネルを付けたい場合
  • 高さ制限がかかり、屋根全面を屋上にできない場合

参考:碧南市における建築基準法に係る制限等について

屋上テラスは「屋上にある広場」のことで、「屋上バルコニー」や、商業施設では「スカイテラス」と呼ばれることもあります。屋上は、屋外階段や屋上に設けたペントハウスを通ってアクセスするのが一般的です。

詳しくは後述しますが、屋上テラスはさまざまな用途で利用されています。これが生活の質の向上に貢献してくれますので、簡単に「屋上は雨漏りしやすいからNG」と否定できないのです。

バルコニー、ベランダ、テラスの違い

さて、屋上テラスと似たような間取りに「ベランダ、バルコニー、テラス」があります。この3つと屋上テラスは、何が違うのでしょうか。

バルコニー

バルコニーは、ラテン語の「balcone」が語源と言われていて、2階以上の外壁から屋外に張り出してつくった屋根のない手すり付きの露台を指します。ポイントは2階以上につくられることと、外壁から張り出していること、屋根がないことです。

参考:レファレンス協同データベース

なお、張りコニーの真下に部屋があり、外壁から張り出さない場合は「ルーフバルコニー」と呼ばれます。ルーフバルコニーに屋根がある場合は「インナーバルコニー」と呼ばれます。

ベランダ

ベランダは、ポルトガル語の露台を表す「varanda」が語源と言われています。一般的には「家屋に沿って張り出した、屋根のある縁」と解釈されています。

ポイントは、家屋の外壁から張り出していることと、屋根があることです。つまり、ベランダとバルコニーの大きな違いは、屋根があるかないか、ということになります。

ちなみに、建築基準法および同法施行令は、ベランダとバルコニーの定義や区分方法を明文化していません。建築基準法施行令に「ベランダ」の記載はなく「バルコニー」に統一されています。

テラス

テラスは、フランス語で盛り土を意味する「terrasse」が語源と言われています。基本的に1階につくられ、建物から突き出した、本来の地面よりやや高くなっている部分をテラスと呼びます。

カフェのテラス席を思い浮かべていただくと、分かりやすいかもしれません。ウッドデッキもテラスの一種と言えるでしょう。先述のとおり、屋上の広場をテラスと呼ぶこともあります。

屋上テラスの使い道

屋上テラスは「プライベートな外部空間」として多様な使い方ができます。いくつか例をあげてみましょう。

  • 大きな洗濯物が干せる
  • ワークスペース
  • 屋外のリビング・ダイニング
  • 家庭菜園・ガーデニング
  • 子供やペットの遊び場

ベランダは、広めの物干し場になります。土間のような使い方ができますので、DYIのワークスペースにも適しています。木工などで出た木くずを、簡単に掃いて捨てられます。

アウトドアリビングやアウトドアダイニングとしても、活躍してくれます。星を眺めながらお酒を飲んだり、友人を呼んで屋上でパーティーをしたり、リラックスタイムを過ごすのにもってこいです。

屋上にプランターを設置すれば、簡単にミニ菜園をつくれます。感染症等が気になり外出したくない日は、お子さまやペットの遊び場にすることもできます。お子さまをビニールプールで遊ばせたい方にも、適しています。

屋上テラスをつくる前に知っておきたいデメリット

つづいて、屋上テラスの短所をご紹介します。

一般的な屋根より費用がかかる

屋上テラスは、建築コストと防水のメンテナンス費用が高くなります。

屋上をつくると、屋上に出るための部屋や階段が必要になります。屋根と同様に、しっかりとした防火性能も必要になります。雪の荷重に耐えられる強度も求められますので、やや建築コストが上がるのです。

木造住宅でよく使われるFRP防水は、おおよそ10年程度でメンテナンスが必要になります。メンテナンスがほぼ不要の防水工法(金属防水など)もありますが、建築コストが高くなります。

なお、固定資産税のアップダウンは、仕上げ素材によって変わります。たとえば、勾配屋根でよく使われるカラーベストと比べると、FRP防水は評価額が上がりますが、金属防水は下がります。

参考:総務省 固定資産税の概要「家屋の評価 別表第8 木造家屋再建築費評点基準表」

維持管理の手間が増える

屋上のような勾配(傾斜)のない水平な屋根は、勾配屋根と比べて雨水がはけにくくなります。しっかり防水しないと雨漏りが発生しますので、定期的な検査やメンテナンスが必須です。

さらに、飛んできた砂・葉・ゴミの掃き掃除、コケ・カビ・排気ガス汚れの除去など、掃除する場所も増えます。美観を保つだけでなく、防水性能を長持ちさせるためにも、必ずおこなってください。

落下事故の危険性がある

法律上、手すりの高さは1.1m以上必要です (建築基準法施行令第126条)。1.1mはじゅうぶんな高さに感じるかもしれませんが、そうではありません。

ときどき、マンションの落下事故がニュースになっています。とくに、小さなお子さまがいるご家庭は気をつけてください。規定より高めの壁や手すりを設けたり、踏み台になるような物や椅子を置かないようにしたりすることが大切です。

物の落下にもご注意ください。落下物が人に当たると、大事故になりかねません。強風で飛びやすい物を屋上に放置するのは危険ですので、台風のときだけでなく、常日頃から気をつけましょう。

屋上テラスならではのメリット

最後に、屋上テラスの長所をご紹介します。

有効活用できる床面積が増える</h3>

住宅は、法令で「敷地面積に占める延べ床面積の割合 (容積率)」の上限が指定されています。上限を超える床面積の家は建てられません。

屋上は室内ではないですので、容積率を計算する際に床面積に算入されません (ただし、ペントハウスは延べ床面積に算入される)。狭小地等で限られた敷地を有効に使いたい方にとって、屋上はひとつの解決方法になるでしょう。

眺望がよい

屋上は眺望がよく、以下の条件に当てはまる方は、屋上をつくる価値が大きいでしょう。

  • 高台で夜景が素晴らしい
  • 毎年、近くで花火大会がある
  • 海が見下ろせる

屋上で景色を眺めながら、簡易なキャンプ&バーベキューをするのも楽しいでしょう。子供も大人もワクワクすること請け合いです。

気持ちのいい季節は、屋上でテレワークしてみるのもよいかもしれませんね。屋上に水栓やコンセントをつくっておくと役立つでしょう。

屋根のメンテナンスがしやすい

勾配屋根は、塗装や葺替えのメンテナンスをするときに足場が要ります。ですから、外壁とセットで、一気にリフォームする方が少なくありません。

とは言え、屋根と外壁は劣化速度が違います。それぞれに合ったタイミングでリフォームするほうが、合理的でしょう。

屋上は、足場なしでメンテナンスすることができます。外壁と一緒に改修する必要がなく、屋上のコンディションに合わせてリフォームできるところが魅力です。

【まとめ】後悔しない「屋上のある家」を建てるには?

木造住宅でも、屋上をつくれます。とくに、狭小地ではプライベートで使える外部空間として敷地を有効活用できますので、屋上が人気です。

しかし、屋上がある家は一般的な勾配屋根の家に比べて、工事の難度が高くなります。ですから、屋上やそれに類するルーフバルコニーの実績が豊富な建築会社に依頼したほうが安心です。

屋上のある家を建てたい方は、できれば複数の建築会社に間取りのプランと見積もりを依頼して、比較検討してください。工事代金の金額だけでなく、提案内容や担当者の人柄もよく確認していただくとよいでしょう。