「新築vs中古、どっちがいい?」論争は昔から絶えません。論争に終止符が打たれないということは、どちらがいいのか答えが出ないということです。新築と中古は、それぞれ長所と短所があり、優劣が付けられません。

では、どちらが人気かと言うと、これまで日本では圧倒的に新築が人気でした。しかし、欧米では中古の流通量が新築を上回っているそうです。近い将来、日本でも欧米のように中古を買ってリノベーションする方が多数になるかもしれません。

本稿では、新築住宅と中古住宅のメリットとデメリットをご紹介します。「新築?中古?」で悩まれている方は本稿を参考に、どちらがいいのか、あなたなりの答えを見つけてみませんか?

新築一戸建てのメリットとデメリット

さっそく、新築一戸建て住宅のメリットとデメリットをご紹介します。

新築一戸建てのデメリット

まずは気になるデメリットからご説明しましょう。

  • 高額の費用がかかるので、資金繰りが大変
  • よい土地の購入が難しい
  • すぐに引っ越し(入居)できない

順番に、詳しく解説していきます。

高額の費用がかかるので、資金繰りが大変

新築は年々求められる性能基準が厳しくなっていて、それをクリアするために少しずつ建築コストが増えています。近年では、人件費や建材費の高騰もあり、住宅価格の上昇が止まりません。

住宅ローンを利用する場合、借入額が大きくなると支払う利息も大きくなります。住宅購入者にとっては「泣きっ面に蜂」と言える状況ではないでしょうか。

また、初めて家が建つ敷地は高額の付帯工事が必要です。たとえば、以下の工事が要りますので、中古住宅より割高になります。

  • 上下水道の引き込み
  • 都市ガスの引き込み

ただし、新築住宅は中古住宅に比べて税制優遇が手厚くなっています。たとえば、登録免許税・不動産取得税・固定資産税が減額され、住宅ローン減税の金額は高く設定されています。

よい土地の購入が難しい

一般の方にとって、土地購入は難関です。不動産業界にお勤めでもない限り、100点満点の土地を買うことはまず不可能でしょう。何年もよい土地を探し続けて、結局買えない人も少なくありません。

人気のエリアは、すでに家が建っています。うまく中古住宅を買って建て替えるしかなく、売りに出されるまで待たねばなりません。運よく買えた場合でも、解体費用や滅失登記の費用など、余分なコストがかかります。

まれに優良な更地(家が建っていない敷地)が売り出されることがありますが、一般の方はほぼ買えません。情報をつかんだ分譲会社や不動産会社が、現金即決で買ってしまいます。

建売住宅であれば、自分で土地を手配する注文住宅に比べて、利便性が高いエリア内の物件を手に入れやすいでしょう。とは言え、そのような地域の物件は人気で、やはり簡単には買えません。立地条件は、中古住宅のほうが有利な傾向があります。

すぐに引っ越し(入居)できない

注文住宅や未建築の分譲住宅は、すぐに引っ越し(入居)できません。早く引っ越しする必要がある方は、中古住宅か建築済みの建売住宅を買う必要があります。

ちなみに、注文住宅の工期は3か月から半年程度です。打ち合わせ期間も含めると、半年から1年くらい。土地から探す場合は、1~2年かかるケースも珍しくありません。

新築をご検討中でしたら、余裕を持って建築計画をスタートすることをおすすめします。

新築一戸建てのメリット

つづいて、新築一戸建てのメリットをご紹介しましょう。

  • 建物や設備が新しく、快適かつ安全に暮らせる
  • 間取りや仕様を自由に設計できるので、自分好みの家に住める
  • 瑕疵(かし)担保責任の期間が長く、長いあいだ安心して暮らせる

順番に、詳しく解説しましょう。

建物や設備が新しく、快適かつ安全に暮らせる

新品の家は気持ちよく、中古住宅では味わえない格別なものがあります。建築主は、新築を建てた充足感や新しいものに囲まれてスタートする新生活など、大きな満足を得られるでしょう。

また、建物や設備の性能は日進月歩で向上していますので、新築はその恩恵にもあずかれます。たとえば、以下の性能は近年大きく向上しています。

  • 省エネ性
  • 耐震性

現在の住宅建築は、グローバルな規模で脱炭素化の流れの中にあります。日本でも国をあげて住宅の省エネ化を推進していますので、消費者や建築会社の断熱意識が向上して、年々住宅の省エネ性能が高まっています。

耐震性も、大地震を経験するたびに住宅の耐震性能基準が厳格化され、向上しています。熊本地震で最新の耐震基準で建てた家が倒壊したこともあり、現行基準を上回る耐震性能の住宅を建てる会社が増えました。

少ないエネルギーで夏は涼しく冬は暖かく過ごせたり、大地震が起きたあとも住み続けたりできる性能は、全ての家が備えておくべきでしょう。中古住宅を購入する場合でも、リフォームで現行の基準に合わせることを検討したいところです。

間取りや仕様を自由に設計できるので、自分好みの家に住める

注文住宅なら、法規等を考慮すれば自由に設計できます。最新かつ高度な住宅性能を実現したり、ライフスタイルや家族のカルチャーを反映させたり、お気に入りの家具の置き場所も考えたりして設計できるのです。

これから建てる家なら、建築現場を見に行くこともできます。自ら設計に関わったわけですから、でき上がっていく様子を見るワクワク感は格別なものがあるでしょう。

お施主さま(建築主)が現場に来られると、職人の緊張感が高まり工事の精度が上がります。たとえば、以下のような「完成した家ではチェックできない箇所」も、しっかり施工されているか確認できます。

  • 基礎の配筋
  • 構造駆体の金物取り付け状況
  • 断熱材の施工状況
  • 外壁下地合板の施工状況

上述の箇所を非破壊で確認できるチャンスは、建築中だけです。このチャンスが得られることは、新築の注文住宅の大きなメリットと言えるでしょう。

瑕疵(かし)担保責任の期間が長く、長いあいだ安心して暮らせる

瑕疵(かし)とは、法律用語で「通常あるべき品質を欠いている状態」を指します。原則的に住宅は、売主や施工業者などが買主や建築主に対して瑕疵の担保責任を負うことになっています。

中古住宅の担保責任の期間は、売主が個人の場合は「免責」や「3か月」程度(売主が不動産会社の場合は引渡しから2年)とするのが一般的です。ただし、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができません (民法572条)。

一方、新築住宅の場合は、主要な構造躯体や防水について、売主や建築会社が「10年間」責任を負うことになっています。中古住宅の瑕疵担保責任と比べると、非常に厳しい内容と言えるでしょう。買主や建築主の立場からみると、安心感がありますね。

参考:住宅瑕疵担保責任保険協会「住宅瑕疵担保履行法とは」

中古一戸建てのメリットとデメリット

つづいて、中古一戸建てのメリットとデメリットをご紹介しましょう。

中古一戸建てのデメリット

まずは、気になるデメリットから解説します。

  • 早晩、修繕や改修費用がかかる
  • 住宅ローン減税の最大控除額が低い
  • 現行法規に適合していない場合がある

順番に、詳しくご説明しましょう。

早晩、修繕や改修費用がかかる

中古の建物や設備は、新品に比べて寿命が短いです。築後10年を超えている物件を購入された場合、さまざまな建築資材や部品が経年劣化していますので、住み始めてすぐに修繕が必要になるケースもあります。

住みながら大がかりなリフォームをするのは、大変です。購入と同時に物件の状態のチェックも進め、必要なリフォームを実施してから住まわれることをおすすめします。

なお「中古住宅購入+リフォーム」は、環境問題の解決につながります。建物を再利用することで、古家の解体や新築で発生するはずだった温室効果ガス(二酸化炭素)の削減に寄与できます。

住宅ローン減税の最大控除額が低い

住宅ローン減税については、中古より新築のほうが有利です。

令和4年度の税制改正で、住宅ローン減税の控除率が「年末の住宅ローン残高の0.7%」になりました。これは、新築でも中古でも同条件です。

一方、控除期間や対象となる住宅ローンの上限額は、新築と中古で違います (住宅性能によっても変わる)。その結果、最大控除額にも大きな差ができました。

  • 新築住宅:控除期間は原則13年、最大控除額は455万円
  • 中古住宅:控除期間は10年、最大控除額は210万円

住宅ローン減税には、さまざまな要件があります。詳しくはこちらでご確認ください。

参考:国土交通省「住宅ローン減税」

現行法規に適合していない場合がある

建築基準法は、ときどき改正されて厳しくなっています。ですので、中古住宅は「建築時は合法でも現在は不適格」ということが起こり得ます。

建て替えや一定規模以上のリフォームをおこなうとき、現行法規に適合させなくてはいけません。たとえば、現行の耐震基準を満たしていない物件は、新耐震基準に適合させる必要があります。

改正で、床面積が規定(建ぺい率や容積率)を超えてしまうケースもあります。この場合、既存建物の減築が必要になります。前面道路の幅が狭い場合は、道路中心から2m後退した線を道路境界とする必要があります。

中古一戸建てのメリット

最後に、中古一戸建てのメリットをご紹介します。

  • 実物や状態を見て買えるので、安心
  • リーズナブルに買えるので、家計に優しい
  • 立地条件がよい物件が多く、生活に便利

順番に、詳しく解説しましょう。

実物や状態を見て買えるので、安心

中古住宅は、ありのままの状態を見てから購入できます。原則的に物件の状態と価格が見合っているはずで、もしも状態と契約内容に適合しないところが見つかれば、売主の責任を追求できます。

参考:法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料」(p43)

ただし、建物や設備の不具合を発見するのは容易ではありません。専門家によるホームインスペクション(住宅診断)等を利用して、建物の状態を把握してから購入すると安心です。

一方、注文住宅や未建築の分譲住宅は完成した家を見られません。図面やモデルハウスを参考に契約することになりますので、完成後に「思っていたのと違う」と感じることがあり得ます。

新築は、質の見極めも難しいでしょう。雨漏りや建物の傾きなど、数年経たないと出てこない不具合は、契約前に確認できません。よって、新築住宅を建てるときは「建築会社選び」がとても重要です。

リーズナブルに買えるので、家計に優しい

新築住宅は、入居した瞬間に市場価格が大きく下落します。10~20%程度下落する家も珍しくありませんので、築浅物件ほどオーバーローン(借入額が住宅の価値を上回る状態)になりがちです。

この下落分は「新築プレミア」と呼ばれます。新築には、販売促進費や保証費 (一部の保証は最初の所有者しか受けられない)、注文住宅の場合は自由に設計できる対価などが加算されているのです。

中古住宅にはこのようなプレミアがありませんので、リーズナブルな市場価格で買えます。コスパ重視なら、中古住宅が有利です。物件によっては、フルリフォームしても、新築より安く収められます。

個人売買の中古住宅なら、消費税もかかりません。ただし、不動産会社に仲介してもらう場合は、仲介手数料(売買代金の金額×3.3%+6.6万円が目安)がかかります。

立地条件がよい物件が多く、生活に便利

利便性が高いエリアは、新築用地が少なくなっています。とくに都市部の便利な地域は、すでに家が立ち並んでいますので、更地はほぼ残っていないでしょう。ですから、立地重視で家探しをするなら、選択肢から中古を外せません。

立地のよさは、資産価値にも影響します。駅周辺や人気の学区内にある物件は、高いリセールバリュー(再販価値)を維持できて、なおかつ売りやすいでしょう。不動産の欠点は流動性が低いことですが、立地の良さはそれを補ってくれます。

【まとめ】新築・中古、どっちがお得?悩んだときの解決方法

新築一戸建てと中古一戸建ては、それぞれ長所と短所があり、どちらが優れていると言えません。住まい手の事情も考慮して、慎重に選ぶ必要があります。

迷ったときは、可能であれば新築一戸建てと中古一戸建ての賃貸物件に住んでみて、比較検討するといいでしょう。実体験にもとづく選択ができるようになりますので、情報だけを頼りに判断するよりおすすめです。 「新築は思ったより少ないし、駅に近い物件は貴重」とか「中古は安いけど、リフォームしないと寒くて住めない」とか、いろ