古い日本家屋には、当たり前のように土間がありました。しかし、洋風建築の普及と共に、玄関以外の場所で土間がつくられることはなくなっていきました。

ところが、近年また土間のよさが見直されています。土間のある家を改修して住む方だけでなく、新築に取り入れる方が増えたのです。

とは言え、土間は現代の住宅様式に適さないから、少なくなったのではないのでしょうか。取り入れることで、困ることはないのでしょうか。 

本稿では、土間のメリットとデメリットをご紹介します。「土間のある家」が気になっている方は、ぜひ最後までご覧ください。

土間のある家のデメリット

まずは、気になる「デメリット」からご紹介しましょう。

  • 冬場は足元が冷える
  • 長時間立っていると疲れやすい
  • バリアフリーにしにくい

順番に、詳しく解説します。

冬場は足元が冷える

冬場の土間は、足元が冷えやすいです。でも、なぜでしょうか?

その理由を説明する前に、代表的な土間の仕上材(表面の材料)をご紹介しましょう。

  • コンクリート:砂や砂利などにセメントと水を混ぜたもの。強度がある。
  • モルタル:砂にセメントと水を混ぜたもの。柔軟で装飾を施すのに向いている。
  • タイル:玄関の床材ではもっともポピュラー。さまざまな色柄の製品がある。
  • 天然石:さまざまな色柄の石があり、高級感がある。お手入れ方法は石による。
  • 三和 (たたき):赤土や砂利などに消石灰とにがりを混ぜて練った素材。叩き固める。

これらの材料は、木材より熱伝導率が高い(熱が伝わりやすい)素材です。そして、熱は高い方から低い方へ移動しますので、土間の材料は木材より空間の熱を奪いやすいのです。その結果、夏場はヒンヤリして気持ちいいのですが、冬場は足元が冷えてしまいます。

また、土間の材料は木材より熱容量(物体の温度を1度上昇させるのに必要な熱量)が高く、熱しにくく冷めにくい特徴を持っています。ですから、一度冷えると板間よりも暖まりにくくなるのです。

参考まで、空気と比較した熱容量をご紹介しておきましょう。

  • 水:3,500倍
  • コンクリート:1500倍
  • 杉材:500倍

空気は非常に熱しやすく冷めやすいため、エアコンで空気を暖めても、すぐ土間に熱を取られてしまいます。一方、土間は熱容量が高いので、なかなか暖まりません。

土間スペースを温めるときは、輻射熱を利用した暖房(床暖房や薪ストーブなど)がおすすめです。冬の太陽をうまく取り入れて土間に蓄熱させる計画もよいですが、夏の暑い日差しは遮れるように工夫する必要があります。

長時間立っていると疲れやすい

石畳を歩いて、足が疲れたりつったりした経験をされたことはないでしょうか。土間も石畳と似ていて、長時間立っていると足が疲れます。

一方、木材は組織構造が多孔質で弾性力があります。つまり、衝撃を加えると組織が変形したりたわんだりして衝撃を吸収してくれるのです。

堅くて頑丈な土間は、踏んだときの衝撃が吸収されず跳ね返り、足が疲れやすくなります。若いあいだはあまり気にならないかもしれませんが、年を取ったとき、思った以上にきつく感じるかもしれません。スリッパやサンダル等の履物で衝撃を緩和しましょう。

バリアフリーにしにくい

土間とは、家の中で、床を張らずに「タイル、モルタル、天然石」などで仕上げてあるところを指します。ですから、土間の高さは、お部屋の床より一段下がり地面の高さに近くなります。

よって、土間と隣接する空間との境には段差ができます。玄関の上がり框(かまち)を想像していただくと分かりやすいでしょうか。靴を脱ぐ場所(土間)と床には、高低差がありますよね。

このような段差は、年を取るごとに負担になっていくでしょう。段差を階段状にして一段あたりの高低差を低くするなど、上りやすくする工夫が必要です。同時に、つまずかないようにする配慮も必要です。

土間のある家のメリット

つづいて、メリットをご紹介します。

  • 汚れが気になりにくく、汚れても掃除しやすい
  • 家の中ではやりづらいことができる
  • 個性的な空間にできる

順番に、詳しくご説明します。

汚れが気になりにくく、汚れても掃除しやすい

土間はお手入れがしやすいので、汚れたり水がかかったりしてもあまり気になりません。ブラシやホウキで、カンタンに掃除できます。水栓や排水設備を設置しておけば、洗い流すことも可能です。

耐久性が高く傷がつきにくいところも、メリットと言えるでしょう。土足で利用することもできますので、 DIYの作業スペースにうってつけです。

家の中ではやりづらいことができる

土間は、家の中なのに半分外のような使い方ができます。ですから、家の中ではやりづらい作業も気兼ねなくできます。

たとえば、土間はこんなことをするのに適しています。

  • 園芸
  • ペットの世話
  • 趣味の道具のメンテナンス

室内にある土間なら、屋外では枯れてしまう植物でも育てやすいでしょう。掃除がしやすいので、ワンちゃんやネコちゃん、メダカやカブトムシの世話もやりやすいですよ。

釣りや自転車、サーフィンなど、ご趣味の道具のメンテナンスをする場所にも適しています。休日に、お好きな飲み物と音楽を用意して、のんびり道具いじりをされてみてはいかがでしょうか。

子供たちの遊び場としても活躍してくれるでしょう。広めの土間なら、なわ跳びや三輪車だってできてしまいます。雨の日でも、へっちゃらです。

個性的な空間にできる

土間は、屋外と室内の中間的な空間です。ですから、土間にはよい意味での曖昧さがあり、普通のお部屋とちょっと違う個性的で異質な空間になってくれます。

また、土間があると段差ができてスキップフロア状になりますので、動きのある空間になるでしょう。モルタルやタイル、天然石などの個性的な仕上材も、インテリアに彩りを加えてくれます。

間取り別の使い方

最後に、間取り別に土間の活用方法をご紹介します。

玄関の土間

家の中で土間と言えば、まず思い浮かぶのが「玄関」ではないでしょうか。玄関は家の顔ですので、土間の設計にも気を配りたいところです。

玄関に広い土間があると、家に入ったときに豪華な印象を受けます。人やものの出入りがしやすく、靴をいっぱい置けるので、たくさんお客さまが来られたときに便利です。

小部屋くらいの大きさの土間にすると、応接用のテーブルと椅子を置くこともできます。部屋に上がるよりハードルが低くなりますので、ちょっと雑談したいときに便利です。

玄関横にウォークインの土間収納をつくるのも、おすすめです。多少汚れているものでも気にせず置けますので、たとえば、以下のような外で使うものをしまっておくのに適しています。

  • ベビーカー
  • 幼児用の自転車
  • キャリーバッグ
  • アウトドア用品

ただし、注意点もあります。建ぺい率・容積率やご予算の関係で建築できる面積には上限があり、玄関の土間収納を大きくすると、その他のお部屋の面積を削らなくてはならなくなる場合があるのです。  

バランスを考えて、うまく間取りをまとめたいところです。 

キッチンの土間

日本の古来の住宅では、炊事場が土間になっていました。土間で料理に使う農作物の下準備をしたり、かまどでご飯を炊いたりしていたのです。

現在、古い日本家屋の炊事場にあこがれ、キッチンを土間にされる方が増えています。まるで、原点回帰のような動きですね。

現在の土間のキッチンは、フロアだけでなくキッチン本体にもこだわって、スタイリッシュにされている方が少なくありません。たとえば、よく利用されているステンレスのキッチンは水や油汚れに強く、おしゃれと実用性を兼ね備えています。

土間キッチンを、土足で使えるようにされている方もいます。土足OKにすると、以下のメリットがあります。

  • そのまま勝手口からゴミ出しができる
  • 重い買い物袋や外で収穫した野菜などを運び入れやすい
  • 土がついたり雨で濡れたりした野菜も、汚れを気にせずに置ける
  • 土間キッチンを庭とつなげれば、庭でバーベキューするときに便利

土間キッチンは、お手入れ方法もあらかじめ想定して設計するとよいでしょう。水栓や排水を設置しておけば、汚れを洗い流すこともできます。

土間キッチンは1段下がるので、ダイニングやリビングで座っている家族と目線が合うのもメリットと言えるでしょう。目線が合えば、家族の会話がはずみやすくなるのではないでしょうか。

リビング・ダイニングの土間

リビング・ダイニングの土間は、吹き抜け天井にしたりお庭とつなげたりできます。面積も広く取れますので、開放感のある土間になります。土間部分と板間の部分の高低差や素材のコントラストも、おもしろいでしょう。

庭と土間を隣接させると、お庭へのアクセスがぐんとよくなります。いちいち玄関を経由せずに庭に出られるようになります。お庭を臨む窓を開け放ったときの開放感がすばらしく、格別です。

土間は、薪ストーブとの相性もバツグンです。薪ストーブは床に不燃材を使う必要がありますが、土間はもともと不燃材で仕上げてありますので、好相性なのです。土間から外に出られるようにしておけば、薪を運ぶのがラクになり、汚れても掃き出せます。

リビングの一角に、土間のテレワークスペースをつくるのもいいでしょう。床材を土間にすることで板間と区分することができますので、気分をスイッチするのに役立つのではないでしょうか。

【まとめ】 土間のある家を建てるなら、メリットとデメリットを知っておこう

近年、土間が見直されています。土間は住宅が西洋化する中で激減しましたが、清掃性や耐久性、意匠性のよさに注目が集まり、新築で取り入れる方が増えているのです。

とは言え、土間にはデメリットもあります。たとえば、足元が冷えることや疲れやすいこと、バリアフリーにしにくいことなど、よく考慮して採用する必要があります。

土間のよさを生かし、個性的な空間にするために、ぜひ建築会社としっかり話し合って設計をすすめてください。しっかり練って設計された土間は、居心地がいい特別な場所になってくれるでしょう。